半端じゃない歴史をもつ峠 奈良r15 芋峠
2003年5月 調査走行
奈良県道15号線は、桜井市を起点に R165(R166重複)から分岐し、安部文殊院のそばを通り、山田寺跡、岡寺前、石舞台古墳と飛鳥地方の花形観光スポットを経由する。ここから芋峠を越えて下ったところで r37 の片割れと合流する。R169 へ合流し、2km 少々の所にある美吉野橋で吉野川を渡り、吉野山に至る路線である。r37 のちょうど西側を進んでいて、終点も r37 と同じようだ。レポートは吉野町側から峠を上ることにする。
r37 の片割れから r15 との交差点を見ている。左に進むと r15/37 重複区間で、R169 へ出る。正面が r15 飛鳥(自治体の名前は「明日香」)方面である。この交差点にはやたらヘキサが立っている。
道幅は1.5車線程度でそれほど狭くはないが、r37 と同様集落が近い場所は拡幅整備するようである。
吉野町千股地区でT字路になった。右が飛鳥方向。左は r255 寺前千股線。
交差点の少し手前から。これからあの谷を越えて行くのである。
ハイカー向けらしき標識が立っていた。上市へはr255 方向へ進む。
突然2車線に歩道付きの改良区間が現れるが、酷険道の常ですぐにもとの1.2車線道路へ戻る。狭くなったとたんに最初のヘアピンが現れた。
それほどの勾配もなく、すぐに稜線に出た。それはよいのだが、えらく脆い地質らしく、山側は土砂が多い。落石も目立っていた(取材日前は晴天が続いていたのだが…。)
落石防止ネットが役に立っていない(いや、役に立ってはいるけど限界か)。ネットのキャパシティを越えて土や石が落ちているのも酷険道名物である。笑っていられるうちはまだいいのだが…。
藤の花が咲いていてきれい。でもよそ見をしていると路肩に積もった砂に足元をすくわれかねない。もちろん、谷側に落ちれば痛めに遭う。
(写真は逆方向を撮影)
同じ場所の飛鳥方向はこんな感じ。倒木はいかにも「横に避けておきました」というだけである。恐らく、落石や倒木など日常茶飯なのだろう。
稜線を走って芋峠に到着。ヘアピンもいくつかあるが、高速コーナー主体で勾配もそれほどではなく、r37 細峠に比べれば拍子抜けである(ただし、落石だけは要注意)。この峠の名前だが、芋峠、芋ヶ峠と書かれたものが多い。google などで調べると、「疱瘡」(いも。天然痘のことらしい)を示し、この先にある栢森(かやのもり)、稲渕の集落や飛鳥の宮へ災いが入らないようにとの願いがこめられている由。
私は藤川圭介氏著の「宇宙皇子」の一説で、この峠の名前に「苧峠」と書き、わざわざ「からむしとうげ」と読み仮名を振っていたのが気になっていた。「苧」とは、私の持っている「グランド辞スパ」によれば麻の一種で繊維を利用できる植物らしい。ネットで調べた程度ではこちらの方はフォロー情報が見当たらなかった。この峠で麻とくれば栢森や稲渕の集落にかかる縄だが、関連があるのかどうかはこの程度では分からない。私の手に余るテーマである。この文中では地図の表記を優先して「芋峠」としている。
稜線沿いに高取城跡へ出るハイキングコースがあるようだが、杉木立のため薄暗い。「廃道か?」とすぐ連想してしまうのは悪い病気なのかも知れない。
峠を過ぎると標高を下げ始めるが、勾配の程度は常識的なレベル。Web を見ると自転車でツーリングされている方も多いようだが、無理なく楽しめるコースだろう。それにしてもこのあたりの木々の茂りかたはすごい。枝ぶりが道を覆いつくそうとしている。
傾斜が緩くなると完全に森の中に入りこんでしまう。昼間でもライト点灯した方がよい道だ。後日(5月後半)通過した時には、道の中央にもう苔が生え始めていた。雨天や雨の後バイクで走行するには注意が必要だ。
こんな人けのない、昼間なお暗い森の中でも、落石防護フェンスに消費者金融の看板がつけてあった。どう見ても道路管理者の許可を取ってなさそうなのだが…。商魂たくましさを通り越して呆れてしまった。
2車線区間が見えれば峠越えは終わり。栢森の集落である。この先、栢森、稲渕と集落が続くが、確実に千数百年の歴史を刻んだ集落である。せっかくここまできたなら辿っていただきたい。
まとめ
勾配は大したことはないのだが、峠道の状態としてはあまりよくない。峠を境に、明日香村側は見通しが悪い森の中、吉野町側は落石・崩土・倒木が多い。特に雨の直後は道路状態が悪いことは想像に難くない。悪天候時は無理せず R169 へ迂回すべきだろう。
春や秋はハイカーや自転車ツーリストの姿も多い。道幅は 1.0 車線幅の区間が多いし、ブラインドコーナーが多く、ミラーがない場所も多いのでスピードの出し過ぎには注意したい。
また、この先になるが石舞台古墳から岡寺方向は日曜祝日二輪車通行禁止である。有名な観光地にもかかわらずこのような規制が敷かれるのは遺憾だが、過去にトラブルでもあったのだろうか。マナーの悪いドライバーというのなら、1.5車線幅しかない r15 上に平気で駐車して車を離れる連中もいる。他の観光客も地元の方も大迷惑である。困ったことだ。